本書は、フランスによる征服から独立までのアルジェリアの歴史を概観するものである。著者であるアージュロン氏は、アルジェリアを中心としたフランス植民地史研究の大家であり、管見では本書以外に
記憶の場―フランス国民意識の文化=社会史〈第2巻〉統合所収の論文が翻訳されている。訳者あとがきでは、氏が病床にあることが触れられているが、2008年に亡くなられた。
はじめに「1830年以前のアルジェリアとアルジェ遠征」は、フランスによる征服以前のアルジェリアの歴史として、オスマン・トルコ支配下のアルジェ州とルジェリア征服の契機となるアルジェ遠征を概観する。
第1部「軍人のアルジェリア(1830年〜1970年)」は、まず、第1章「征服」で、7月王政下での場当たりのアルジェリア征服を概観する。またこの時期の「原住民政策」や植民の始まりについても触れる。次いで、第2章「第二共和政と第二帝政下のアルジェリア(1848年〜1870年)」で、第二共和政による同化政策とナポレオン三世によるアルジェリア政策を概観する。
第2部「植民地アルジェリア(1870年〜1930年)」は、まず、第1章「コロンの勝利」において、第三共和制下の同化政策と殖民地化の進展を概観する。次いで、第2章「ムスリム社会の発展と『原住民政策』」で、アラブ農民の貧窮化、原住民政策、ムスリム社会の政治的発展を概観する。
第3部「『アルジェリアは生き残れるのか』(1930年〜1954年)」は、まず、第1章「1930年〜1954年の経済的、社会的発展」で、ヨーロッパ系住民の社会的・経済的発展、ムスリム住民の社会的・経済的発展について述べる。次いで、第2章「1930年〜1954年の政治的発展」で、アルジェリア・ナショナリズムの誕生とその発展を概観する。
第4部「アルジェリア戦争」は、まず、第1章「第四共和制下のアルジェリア叛乱とフランスの対応」で、1954年のアルジェリア民族解放戦線(FLN)による武装蜂起から1958年までの経緯を述べる。次いで、第2章「『5月13日』からエヴィアン協定まで」で、1958年の5月13日暴動から1962年のアルジェリア独立までの経緯を述べる。
第5部「独立後のアルジェリア」で、独立後のアルジェリアを概観する。
以下、簡単な批評。
1) 本書は、アルジェリアにおけるフランス植民地支配の歴史について非常に簡潔にまとめられており有益である。しかし、専門的用語が説明もなく多く使われているため、予備知識無しでは難しく感じるだろう。日本語訳は可もなく不可もなくといったところか。しかし、文学的な表現の多いフランス語圏において、アージュロンの文章は比較的読みやすい方だと思う。それゆえ、もう少し読みやすくすることができるのではないだろうか。訳者がイスラム地域研究者であるためか、フランス植民地史に関する記述が弱い。とはいえ、フランス植民地史の大家であるアージュロンによる本書は読む価値があるだろう。
2) 「同化」について(p.37,66-71)。本書において、同化政策とは植民地ではフランス人とフランスに帰化したヨーロッパ人のみを対象として法的同化を認めようとする政策とされる。他方で、フランス本国ではフランス法の適用によりアラブ人を文明化しようとする政策も同化政策とされる。この植民地における「同化」と本国における「同化」との齟齬がアルジェリアの植民地の歴史に刻まれているとされるが、後者の「同化」は原住民政策として規定されている。つまり、異なるレベルの政策を同じ「同化」のカテゴリーで括っており、「同化」が分析概念なのか実行概念なのか曖昧になっている。
3) 協同政策について(pp.48-55, 90-93)。本書において、協同政策とはアラブ人にフランス法を強制的に適用するのではなく、ムスリムの身分を保持させ、教育制度を充実させ、文武の職業にも就けるようにし、アラブ人共同体とフランス人共同体と連帯・協力を実現しようとする政策を指す。この「協同」は同化政策に対抗するものと捉えられているが、第二帝政期においてはフランス人とアラブ人両方を対象とする政策とされる一方、1901年以降の協同政策は原住民政策とされており、そのカテゴリーは一定でない。