エイホ、ウルマン、ホップクロフトのトリオによって次々と著されたコンピュータ・サイエンスの教科書の中で、それらを代表する一冊(二部作)であり、同時に、アルゴリズムの古典的教科書としてクヌース(Knuth)の三部作に並ぶ名著です。
最近ではさまざまなアルゴリズムが、最先端のものも含めて C++ や Java などのライブラリとしてインプリメントされ、無償で提供されています。このような状況の中で、アルゴリズムというものがブラックボックスとなってゆく傾向があるかも知れません。
しかし、例えばソーティングひとつを考えても、さまざまなアルゴリズムにはそれぞれの個性があります。代表的な高速アルゴリズムであるクィックソートも、メモリの制約が厳しい組み込み機器では選択を避けるべきかも知れません。このような判断には、やはり代表的なアルゴリズムへの十分な理解が必要です。その意味で、このような名著の存在意義は薄れることがありません。
ただ、この書物にはひとつの弱点があるといえるかも知れません。それはポインタの概念を配列とその添字の概念に替えて解説を展開している点です。この教科書が書かれた当時は、Fortran のようにポインタの概念をもたない言語が広く使われており、また、原理的にはポインタを配列とその添字で説明することが可能という事情がありました。しかし、最近ではポインタの概念を備えた言語がむしろ主流であり、また、ポインタと配列とでは、実際的な観点からいえば表現として少なからず異なるということがあります。
この書物を人に勧めるとすれば、その点においてわずかなためらいがあります。