表題作を含めて7つのSF中短編を集めたアンソロジーです。
この作家・山本弘には4年前に『
アイの物語』で、そして2年前に『
超能力番組を10倍楽しむ本』で、大変強い感銘を受けたものです。久しぶりにその著作を手にすることにしました。
7つの作品の底辺に共通して流れるテーマは、この世のうさんくさいものに無邪気に、そして無批判に取りこまれて夢見心地になっている読者を覚醒させる、といったところでしょうか。と学会会長も務める著者ならではの面目躍如たる作品集です。
表題作『アリスへの決別』は行き過ぎた検閲社会の広がりに対する疑念を、そして『リトルガールふたたび』はオバカタレントばかりがもてはやされる最近のテレビ番組群がもたらす未来の恐怖を描いています。
『七歩跳んだ男』は宇宙を舞台に『
CSI:科学捜査班』か『
NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』ばりの科学捜査ミステリーが展開しますが、最後に示されるのは世に流行る似非科学知識の妖しさです。
『地獄はここに』はSF色が薄まっていて、どちらかというとホラー小説のジャンルにくくれるだろう作品です。この物語も、占いや透視といった代物を手立てにテレビがモンタージュ(編集)の妙で仕立て上げる“真実”のまがまがしさを突きつけてきます。
難点を言えば、ほぼどの作品もメッセージをあまりにストレートにつきつけてきて、鼻白む思いをさせられることが多いのです。小説の中に作者が忍ばせたメッセージを読者が読み解くといった趣向ではなく、明確な言葉でメッセージをそのまま登場人物に語らせてしまうことも珍しくありません。ですからどことなく説教くさく感じてしまうのです。
作者の言わんとすることはもっともですし、警鐘を鳴らさんとする意思にも敬意を表しますが、メッセージの伝達法にもう少しひねりを利かせたほうが、大人のSF物語に仕上がったのではないでしょうか。