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アラブ革命の衝撃 世界でいま何が起きているのか
 
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アラブ革命の衝撃 世界でいま何が起きているのか [単行本]

臼杵陽
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

いまアラブ諸国で吹き荒れる民主革命の熱風。それは独裁政権だけではなく、私たちの世界認識そのものをも覆した。アラブ・ナショナリズム、アメリカ覇権の凋落、民主化のゆくえなど、多彩な切り口で、日本の報道からだけでは分からない、この歴史的大転換の根底にあるものを問う。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

臼杵 陽
1956年生まれ。東京大学大学院国際関係論博士課程単位取得退学。佐賀大学、国立民族学博物館などを経て、日本女子大学文学部史学科教授。京都大学博士。専攻は中東地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 251ページ
  • 出版社: 青土社 (2011/8/25)
  • ISBN-10: 4791766172
  • ISBN-13: 978-4791766178
  • 発売日: 2011/8/25
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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By koji
「中東」と呼ばれる地域の国際関係は、とても複雑で、分かりづらい。
新聞で報道される国際関係のニュースでも、この「中東」地域については、正直に言って、全く理解できていなかった。
さて、本書は、2011年4月8日から6月24日まで、朝日カルチャーセンター新宿教室で行われた講座「今、中東の政治変動を考える-「政変」の底流に流れるものー」に基づく記録を書籍化したものである。
中東地域研究者である著者が、今、起こっているアラブ革命のリアルタイムの時事分析ではなく、今、アラブ世界で起こっている事態を、歴史的なタイムスパンの中でどのように見るべきなのか、という考え方を提示している本である。
その際に検討の視点となるのが、植民地遺制、ナショナリズム、戦争と平和、民主化、イスラーム運動、民族。宗教紛争という点である。
この中で、筆者が注目したのは、以下の点である。
「アラブ・ナショナリズム」は、19世紀中頃にキリスト教徒によって提唱されたアラビア語という言語と文化的伝統に基づいて「アラブ人であること(アラブ性=ウルーバ)」を強調する文化運動、また、アラブ人には、イスラーム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒が含まれ、宗教・宗派の違いを乗り越えるために、言語という文化を重要とし、「言語ナショナリズム」として出発した。
アラビア語には、「ナショナリズム」という言葉自体が存在しないために、「カウミーヤ」と「ワタニーヤ」という2つの考え方に翻訳される。
「カウミーヤ」は、大きな集団の単位を想定したものであり、文化的な絆を強調するもので、我々はアラビア語という共通言語でつながっているという意識のことである。
これに対して、「ワタニーヤ」という考え方は、ワタン(祖国、生まれた場所)に基づく地縁的な絆を強調するような民族主義で、英語で言うパトリオティズム(愛郷心)に近い言葉である。
この2つのナショナリズムがアラブ世界では同時並行的に存在していて、「自分はエジプト人であると同時にアラブ人でもある。」という帰属意識の重層性がある。この重層性がアラブ世界あるいは中東地域を考えるときに分かりにくくしている。そして、さらに、この重層性の上に、「イスラーム」という宗教が加わってくると三重構造になり、いっそう混乱をきたすことが多い。
次に、イスラームの民主主義について、イスラームは原則として国民主権を認めない。イスラームにおいて、主権者・立法者は神のみである。これを「神の主権」と呼ぶ。イスラーム法(シャリーア)に忠実なイスラーム主義者は、国民主権に反対である、と考えられている。しかし、クルアーン(コーラン)に、協議や相談を意味する「シューラー」という考え方があり、これは、イスラーム的な決定システムで、それに従うのが義務とされている。したがって、このシューラーがより多くの人々の政治参加を保証しているとすれば、民主的ではないとは言えない。シューラーは、イスラーム民主主義の根拠と言えるのはないか。
さらに、もう1点注目した個所は、「アラブ・ナショナリズム」の章で触れられている、アメリカによるウサマ・ビン・ラーディンの殺害の歴史的な意味についてである。
日本では、新聞やテレビがひたすら「報復がある」危険性を前面に押し出す報道ばかりで、識者などに聞いても、最終的に「報復テロ」があるのだと言わせるためにインタビューしているようで、はじめに結論ありきの報道の仕方であった。
これに対して、30年から40年近くも、ずっとレバノンに住み続け、中東報道をし続け、過去にビン・ラーディンに3回もインタビューをしている、ロバート・フィスクというイギリスの新聞『インディペンデント』紙の記者は、「ビン・ラーディンは名前だけの存在であり、、つまりイコン(聖像)にすぎない。」と言い、聖像として掲げられているだけであり、実質的な力は持っていない、という。その証拠に、今回のデモの中でも、ビン・ラーディンやアル・カーイダの名は一言も出てこなかった。彼のやり方ではアメリカと手を組んだムバーラクやサウード王家の体制を結果的に倒すことができなかったために、アラブの人から見放され、フィスクは「その目標達成に失敗した一人の中年男にすぎない。」と辛辣な言い方をしている。そもそもアラブ世界では、アル・カイーダあるいはビン・ラーディンが時代遅れになってしまっている。
特に、本書で、著者は、中東地域の現状を考えるときには、歴史的な視点を重要視する。つまり、この地域の国家の成り立ちがそれぞれ異なっており、どこの国の植民地であったのか、また、第一次世界大戦までオスマン帝国の支配下であったのか、等の区別が分かれば、現状を理解できる、というのである。欧米の研究者も「オットマン・レガシー(オスマン朝の遺産)」という要因を重要視している、という。
本書は、筆者のように、「中東」の国際関係、19世紀から現代まで続く歴史的な経緯などについてほとんど知識がない者にとって極めて基本的で、有益な知識を提供してくれている。
本書は、「中東」地域の政治体制の動きを理解するためのとっておきの入門書と言えるだろう。
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By モチヅキ VINE™ メンバー
 本書は1956年生まれの中東地域研究者が、板垣雄三的方法でアラブ革命の底流を考えるための概説として、2011年のカルチャーセンターでの講座をもとに同年に刊行した本である。本書によれば、第一に中東の範囲は西洋との関係によって変わるが、日本の研究者はアラブ・トルコ・イラン語圏を指して用いる。第二に、アラブ世界は歴史的経験によりマシュリク、マグリブ、アラビア半島に大別され、そこでの紛争の多くは、国家の枠組みと文化的な集団の居住区とのずれにより生じている。第三に、19世紀にキリスト教徒を介して登場したアラブ・ナショナリズムは、言語共同体と愛郷心に大別され、オスマン帝国のトルコ化政策への反発として政治化し、帝国崩壊後はアラブ諸国の統一を目指す運動となったが、第三次中東戦争で挫折した。その後イスラーム主義が前面に出るが、ビン・ラーディンの敗北と共に挫折し、世俗的なアラブ革命に取って代わられた。第四に、イギリスはシオニストに冷淡であったため、彼らは米国の後援を受けて反英武装闘争に走り、指導者を失ったパレスチナ人を難民化させて、イスラエルを建国した。またイギリスがPLOの登場までパレスチナ人の利害をアラブ諸国に代表させたためアラブ・イスラエル戦争が生じたが、エジプト・イスラエル和約後にそれはパレスチナ・イスラエル紛争に転換した。第五に、中東で民主化が進むと反米イスラーム主義政党が台頭するため、米国は表向き民主化を掲げながら実際には権威主義体制を容認している。第六に、民主主義の多様性を踏まえると、イスラームは民主主義に反しない(近代法とイスラーム法の併用で解決できる問題も多い)。第七に、カピチュレーションおよび「代理戦争」的構図によりオスマン帝国が崩壊する過程で、自治的な宗教共同体(ミッレト)が民族共同体に変化したことが、中東の民族問題を複雑化している。
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By 金魚
Amazonが確認した購入
まず最初に書いておくと、この本はアラブ革命の今現在の情報について書かれたものではありません。
どちらかというと今起こっていることを理解し、予測するための基礎知識的な内容になっています。
実際アラブ諸国といっても範囲が広く、一読しただけでは覚えきれません。
ですが講座をもとに編まれた本書の語り口はわかりやすく、良い文体だと思います。
特に第4章「アラブ・イスラエル紛争とその余波」は著者の専門ということもあって、コンパクトにまとまっています。
パレスチナ問題を把握するのに便利です。
第5章ではイスラムと民主主義を主題としていますが、イスラム=専制という思い込みを反省する良い機会になります。
中東問題はオスマン帝国との関係で考えるとよくわかる。
しかし、オスマン帝国の支配の問題というより、オスマン帝国を巡るヨーロッパ列強の確執の問題という方が良いと思います。
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