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日本における十字軍の受容はおもに西洋発のものであった。
学校の世界史の授業でも西洋からの視点で十字軍について教えられている。つまり加害者からの視点である。この書は被害者であるイスラム世界側の視点から描かれているという点で興味深い書である。
この書には西洋における十字軍の事情はほとんど語られない。
十字軍の提唱者であるウルバヌス2世の名はほんの一部、他の十字軍に関する書でよく取り上げられるフリードリヒ・バルバロッサやリチャード1世もわずかにしかでこない。この書で登場する西洋人はサンジル・ゴドフロワ・ボエモンといった実際に従軍し、現地に王国を築いた騎士たちの名である。
そして当時の中東情勢のおいて十字軍がどれほどの影響を持っていたかも知ることが出来る。乱立気味の東イスラム世界において十字軍は大きなインパクトであったことは確かだが、イスラム諸侯が一致団結して十字軍と戦うことは殆どない。イスラム諸侯間での集合離散、場合によっては十字軍勢力と結んで他の諸侯と戦う姿はこれまでの十字軍とイスラムの戦いのイメージを覆すものである。
十字軍というとどうもイメージ先行だった嫌いがある。
この書で当時のイスラム世界の情勢というものを知ることが出来た。
ジハードの戦闘的側面は近代において強調されるようになったというが、確かに十字軍時代には宗教的に強い動機を持つジハードが行われたわけではないようだ。
最期に題名の「アラブが見た」というのは内容を正確に表していないように思う。なぜなら、この時代・地域に登場する人々の多くはトルコ人・クルド人といった非アラブのムスリム勢力だからである。
いまだ「半未開」といった段階の西ヨーロッパのキリスト教徒が「宗教的熱狂」に駆られて、イスラーム諸国の混乱状態につけ込み、各地を劫略しつつイェルーサーレームを占領した第1回十字軍から、彼等が再びヨーロッパへ放逐される迄の経緯を、かなり公平な視点から描いていて好感がもてます。
およそ「歴史」に関心のある方には必読と言っていい位の優れた本と申せましょう。
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