注意したいのが、本書は、
「アラビアンナイト(千一夜物語)の内容を紹介する本」
ではなく、
「アラビアンナイトとは何かを徹底的に追求する本」
だということ。
つまり、アラビアンナイトがどのように成立し、その後世界中に広まって行ったのかを、主に中東からヨーロッパに広まる際のあれこれを中心に説き起こす一冊なのだ。
とまぁ、私も勘違いして読み始めたクチだが、それでも本書は十分に面白かった。
アラブ世界ではあまり高く評価されていなかったアラビアンナイトを、ヨーロッパ人たちが興味や憧れ、あるいは一攫千金のために恣意的に翻訳し、カスタマイズしていった結果、今のようなアラビアンナイトの形ができていくという過程は非常に興味深い。
そしてそれがアラブに再度伝えられるという流れは、自国文化のよいところは外から見ないとわからない(浮世絵など)ということの好例と言えるのかもしれない。
ヨーロッパのオリエンタリズムの変遷もよくわかり、アラビアンナイトそのもののことだけでなく、ある文化と別の文化との関係、文物の伝播の過程についてなど、あらゆる意味で示唆の多い一冊。