古川日出男は私の好きな作家で、中でもこれは白眉の作品であると思います。
ほかのレビュアーの方は、減点要因として「大仰でこねくりまわしたような修辞」
をあげていますが、これは私にとってこの作品の大きな魅力の一つであり、もし、
この事を理由に本書を手にすることを躊躇される方がいるとしたらすごく残念なこと
なので、作品中の独特の修辞には理由があることを、ここで述べさせていただきます。
まず、冒頭に作者が宣言しているとおり、この作品はアラビアに重層的に伝わって
きた物語を作者が日本語訳したという体裁をとっています。
したがって、必然的に物語は海外の童話・説話・ファンタジー小説などが日本語訳
されたときの、あの独特の「大仰でこねくりまわしたような修辞」で語られ、特に、
タイトルどおり物語の構造の一部や語り口等はアラビアンナイトを多いに参照しています。
おそらく、海外のその手の物語に触れたことがある方は、作者独特の諧謔にニヤリと笑い、
この不可思議な物語に乗ってやろうと思うことでしょう。
それから、長過ぎるという批判もあるようですが、章立てが適度で読み区切りが
つけやすいですし、私はアラビアンナイトのつもりで夜毎気長に楽しく読みました。