鮎の名川として知られる吉野川(紀ノ川)の流域の人たちと川や鮎との付き合いの歴史を丹念に取材した労作。川と人の付き合いが健全であったころを検証する上でも一級の資料である。
川というものがこれほど豊かであったということ、そして、そこにすんでいる天然の鮎は、単なる生き物の一つではなくて、私たち日本人にとってはやはり特別なものであったことを再認識させられた。
私たちは、なぜ川との付き合いをやめてしまったのか、なぜこれほどまでに川のことを分からなくなってしまったのか、いろいろと考えさせられた。
「私たちはアユをはじめ川の生き物たちと同じ世界を生きているのだ。そのことを知れば、川の在り方を考える時、たとえば『アユが大事か、人が大事か』などという議論は入り込む余地がないと思う」(本文抜粋)という、著者の意見の中にその答えは見えつつあるように思える。
吉野川を題材にして書かれた本ではあるが、けっして「地域本」ではない。全国の川に共通する普遍性がある。川と人の関係が健全だったころを知りたい方はぜひ一読を。