巻頭に、次のようにまとめられている。アメーバ経営とは、組織を小集団に分け、市場に直結した独立採算制により運営し、経営者意識を持ったリーダーを社内に育成すると同時に、全従業員が経営に参画する「全員参加経営」を実現する経営手法なのである。
従業員が三〇〇人に増えていったとき、会社を小集団の組織に分け、小集団のリーダーに任せて管理してもらえばよいとひらめいたという。どうせ小集団に分けるなら、独立採算にできないか、独立採算制で管理するには損益計算が不可欠だが、専門的な決算書では素人にはわかりにくいから、「時間当たり採算表」を作成したとある。
「売上を最大に、経費を最小にする」という原則からすれば、各工程においても経費を最小にすると同時に、売上を最大にするよう努力をしてもらわなければならない。そこで、会社全体を小さなユニットオペレーションに分割し、そのユニットがお互いに社内で売買するような仕組みを設ければよいことを思いついたという。
アメーバ経営を実践していくには、必要欠くべからざる要諦がいくつかあるという。「明確な収入が存在し、かつ、その収入を得るために要した費用を算出できること」、「最小単位の組織であるアメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」、「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」。例をあげて説明してくれているが、アメーバ―経営が健全に機能するには、容易ならざる不断の努力と工夫が必要であることがよくわかる。ちなみに、現在の京セラでは細分化されたアメーバの数は約三〇〇〇に至っているという。
アメーバ間の値決めは、お客様に売る最終的な売価からさかのぼっていくものである。そのため、製造部門のアメーバは、与えられた標準原価で製品をつくるのではなく、市場価格のもとに、自ら創意工夫をしてコストを引き下げ、自分の利益を少しでも多く生み出すことが使命となっている。
時間当たり採算表については、製造部門、営業部門の両部門につき、従来の受注生産方式から多角化の結果必要となった在庫販売方式まで、具体例を交えて説明している。
時間当たり採算表に言う差引利益とは、収入から労務費を除く経費を差し引いた付加価値という。なぜ労務費を経費に含まないようにしたのかについて、二つの説明を行っている。一つは、労務費が各アメーバでコントロールできない性質を持っているからだという。労務費自体は、会社の採用方針、人事や総務に関連する方針により、その金額がほぼ決まってしまうため、との言及もある。もう一方で、人はコストというより、付加価値を生み出す源泉であると言う。また、(労務費を経費項目に含めると)労務費ばかりに目が向けられ、経営全般に対して改善や改良の手を打つという、アメーバ本来の機能が果たせなくなるという恐れもあると説明している。
営業部門の収入は売上の何%というコミッション制にし、各工程間の社内売買において社内口銭を支払う仕組みにすることで、営業部門へ支払う営業口銭を各工程が公平に負担することにしている。このようなきめ細かさと整合性なしに、アメーバ経営といった経営手法は機能しないのであろう。
採算表では、時間当たりの付加価値を指標としているため、日々の経営活動においては、時間という概念が採算を決める重大な要素となる。ここで言う時間は、製造にかかった時間(投下時間)だけではない。実際の製造活動を行っている稼働時間以外の時間も含まれている部門の総時間に注目することが重要だという。
稲盛氏曰く、「アメーバ経営は、世間でもてはやされているような経営ノウハウではない。・・・アメーバ経営者やり方だけを真似してみても、うまく機能しない。」また、「アメーバ経営は、経営のすべての分野に密接にかかわっており、その全体像を明らかにすることは容易でない。」とも言っている。
本書を読み終えて、私も全く同感である。