アメリカのコーポレート・ガバナンスは、取締役会と経営陣を分離することで経営陣の暴走をチェックするという建て前をもつが、著者によると、実際には最高経営責任者による取締役の抱き込みや取締役の併人が常態化していたらしい。さらに、暴走をチェックするはずの外部会計監査法人が企業と利益相反の関係になっていた点や、ストックオプションで経営者のやる気を高めるしくみが株価至上主義とバブルの加速、不正会計を助長していた点なども指摘している。また、その建て前と実態のかい離を、不正会計で破綻した一連の企業やGEのジャック・ウェルチの事例などから読み取るほか、一世を風靡した「IT革命論」「ニューエコノミー論」にも批判の目を向けている。アメリカが十数年来かけてつくり上げてきた経済と経営のしくみは「『資本主義の到達点』でも『最強の経営システム』でもなかった」というのだ。
翻って、著者はなぜ日本はそのようなアメリカ型を「一週後れ」で後追いするのかと問いかけ、日本が取り組む会計、金融、コーポレート・ガバナンスの諸改革や「小さな政府論」の落とし穴を指摘している。そして、日本の経済政策の議論は米国の現実ではなく、日本の現実から発想すべきだと力説するのである。日米の経済と経営の課題に鋭く切り込んでおり、日本の改革論を冷静に見る目が養える1冊である。(棚上 勉)
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