04年から4年間特派員としてアメリカに滞在し、その食文化の異常さ、肥満者の多さに驚いた著者が肥満問題について調査した本。アメリカのデブの多さと味音痴ぶりを半ば嘲笑混じりに紹介している本、特集は多いが、肥満と味覚の問題はアメリカ人に特有なものではない。本書は優れたマーケティング、公教育予算の貧困、経済格差など複合的な要因で、80年代以降急速に進んだと見ている。
「救急を要請したデブが家から出られず壁を壊して…」という話はよくバラエティー番組で見るが、アメリカではもはや笑い話ではない。兵隊や消防士すら、肥満者が存在して問題になり、今や身長170センチで体重85キロ以上という肥満者は人口の3分の1を占める。80年代以降、ラテン系移民の流入などで経済格差が進み、低収入世帯では共働きの家で料理が作れず、生鮮食品を売る店も周囲にないので、ファストフードやスーパーで2個1ドルのタコスみたいな安くて腹も膨れる高カロリー高塩分食品に依存している。また、映画館、球場でバケツみたいなポップコーン(1200kcal)や、30センチもあるホットドッグをばかばか食う。野球場の「食べ放題シート」は大人気で予約がすぐ埋まるという。「食べ物で客を釣る」「食べ物で本業収入の不足を補う」戦略は恐ろしく有効に機能している。そもそも食べ物のメガ化は「もっと食べたい」「もっと濃い味を」という潜在的な要求に、ハーバードビジネススクール出身のマーケティングの天才が「お得感」の名の下に応えたのが始まりだ。高教育現場でも、予算がないため、清涼飲料水を販売する権利を大企業に販売し、予算不足のため手軽な加工食品を出しているので、栄養など全く考慮されない。食育とやらにやかましい日本では考えられない。
著者は留学も含め、度々アメリカで生活しているとのことだが、特派員として渡米して肥満者の多さと、塩の塊のようなチップスやコーラの愛好ぶりといった食文化のあまりの違いに驚いたという。だが、びっくりはそこで終わらない。帰国して日本の食文化がアメリカとシンクロしていることにも驚いたという。クリスピークリームドーナツ、がっつり飯、濃い味ブーム、「メガ」ブーム、本書には取り上げられてないが魚粉系つけ麺ブームもそうかな…
私もそうだが、スタバ、マック文化にどっぷり浸かっている人は戦慄の読後感ではないだろうか。スタバ・ホワイトモカグランデの430キロカロリーって飲み物じゃなくデザートだと著者は言う。マックで本書を読んでいたが、あちこちに散りばめられたファストフードのカロリー数が表示されるたび、ポテトを取る手が重くなった。マックは当分お預け、スタバは無脂肪乳に限ろうかなと思う。