アメリカといえば「多様性」という枕言葉がついて回るところ、9つの種々多彩な「コミュニティ」訪問の体験を経て、筆者はそれをより具体的に、「アメリカは○○であるという」定義づけを常に拒む「カウンター・ディスコース」(対抗言説)の存在であると喝破する。本書を読んで、(近時かなり凋落気味であるとはいえ)かの国のダイナミズムがよくも悪くもこのような対抗精神(spirit of counter-discourse)に支えられていることがよくでき、大変参考になった。(また、そうした対抗言説が、市場主義の論理に対するいわば「立ち位置」の問題に帰着することもよく理解できた。)翻ってわが国を見れば、そのような対抗言説が各所で生まれているようにも見えず、逆に人口的にも国富的にも東京への一極集中が進もうとしている。アメリカも生き難いが、日本はもっと生き難い。どこかにバランスのとれた中庸の国はないものか・・・(一点、筆者の誠実かつ真摯な分析は好感がもてるものの、その反面、読みやすさという点では欲を云えば叙述に今一つ工夫が必要であるように感じた。残念だが、その分一星ダウン。)