デンゼル・ワシントン演じるフランクが黒人マフィアの世界で大ボスにのしあがっていき、やがて思わぬ所から足がついてラッセル・クロウ演じる刑事によって悪事を暴かれるまで、及び後日談を描く力作だ。とにかくデンゼル・ワシントンのクールな「ビジネス」の進め方とスタイリッシュな振舞いに魅了された。米国マイノリティーの悪のエリートでここまで惚れ惚れするオーラを感じさせてくれたのは、私にとってはイヤー・オブ・ザ・ドラゴンのジョン・ローン以来である。そういえば悪のヒーローを執念深く追い詰める刑事がだらしない面を持つという点でもイヤー・オブ・ザ・ドラゴンに似ている。もっともイヤー・オブ・ザ・ドラゴンのミッキー・ロークほどよれよれではなく、司法試験の勉強をしているように向上心を持った刑事なのだが。
アメリカがベトナム戦争の泥沼に陥った時代を背景にした大河ドラマのような上質の作品に仕立てたリドリー・スコット監督の手腕もさすがだ。光と陰の魔術師ぶりはさほど強くは発揮されていないが、時代の雰囲気を的確に活写する演出は見事。古希を過ぎてなおエネルギッシュな監督に敬意を表したい。光と陰のコントラストが強烈なのが歴史的なジョー・フレージャー対モハメッド・アリ戦の会場となったMSGの場面というのも私のような年代にとっては嬉しい。あの頃のボクシング・へヴィー級タイトル・マッチの熱気に魅せられた私にとって記憶に残っている一戦だからだ。あの観衆の中にフランクがいたとは。
まとめると、本作は、俳優、特にデンゼル・ワシントンの魅力と監督の力量が合致した必見の傑作だと評価したい。