大変おもしろく、斬新で興味深い本です。
米国発金融危機、さらに世界をも未曾有の経済不況に巻き込んだ
米国型の人事制度、組織構造、労働環境を、日本のそれらと対比
させながら、「行き詰った」米国型労働モデルに「さよなら」して、
日本丸はどこへ向かうべきか?
日本に持ち込んだ成果主義、自由裁量労働などと、
旧来からあり、いまだに生きている20世紀の遺産、年功序列、終身雇用など
を解剖しながら、日本の人事制度の失敗を、日本的雇用習慣に米国的
実力主義、時間感覚を持ち込んだための不整合と説きます。
ホワイトカラー・エクゼンプションなどを、類書にはない、
日米両方の、オフィスワークから店の掃除まで、現場に即した
「まるでタマネギの皮をむいて」いくように、丁寧に解剖しながら、
比較していきます。秀逸なのは、非正規社員に関する「働き方」
「社会制度」「社会保険」「企業内差別」格差などを、日米で詳細に
具体的に比較し、われわれが抱く間違ったイメージをくつがえします。
結局、企業も労働者もともに前進するための根本的な問題は、
個人の命運を企業に人質にとられているという形態を辞めて、
「自分自身の生き方については、自分で自由に」なるような社会に
するしかなく、ひとつの提案として大学を高度な職業訓練の場に
する、としています。
ただ、著者の提言のエッセンスが、教育の見直し、と同時に、
グローバリズムへの対応(たとえば高度で実用的な英語教育)をもっと
すすめることに読めて、日本という国の将来に、ちょっと暗澹たる
気分にならなくもないです。
とにかく、米国と日本の労働習慣、制度を表面的でなく、コアを
克明に知ることができ、在米経験が長い著者の視線の鋭さは、斬新です。