従来、アメリカが国際法上非難を巻き起こす可能性のある原爆の投下に踏み切った可能性についてはいろいろ論議されてきた。日系三世である著者は、戦争早期終結のため、対ソ牽制のため、莫大な開発費を投じたことへの理由付けのため、といった従来の見方に加えて、ルーズベルトの死去に伴い、思い掛けなく大統領に就任してしまったトルーマンが、周囲の冷たい目を跳ね返し、自らのリーダーシップを見せつけるために「男らしさ」を演ずる必要があったのも一因だ、という新たな見方を提出している。このように原爆投下を単一の原因に帰すことをせず、多角的に捉える見方は歴史認識としては正しいものだろう。唯一の被爆経験国の国民として、そして核廃絶への第一歩を考える上で、原爆投下の理由を正しく知ることは大変大切なことだと思われる。