「なぜ、超大国のあるじである歴代アメリカ大統領たち、そして連邦議員団は、
自国の戦略的利害にかなう『包括的な中東和平』を犠牲にしてまでイスラエルに
露骨な肩入れを行ってきたのだろうか。そこには……ユダヤ票の力がある。また
ユダヤ・マネーの威力がある。ユダヤ・パワーのエンジンとも言うべきユダヤ・
ロビーの圧力がある。そしてユダヤ・ロビーの意を受けて動くユダヤ人連邦議員
団の働きかけがある。さらに何よりも強力な同盟者であるキリスト教右派の
大票田も見え隠れする」。
本書は2006年の
同名テキストの文庫化、ただしエピローグがオバマ政権と
ユダヤとの関わりに割かれているように、かなりの修正が施されたものと見える。
なぜに全人口の2パーセントを占めるにすぎないユダヤ系がこのような支配力を
超大国アメリカに対して持ち得るのか。その答えは例えば選択と集中、本書が示す
彼らの戦略的、戦術的したたかさには世に遍く「ユダヤ陰謀論」よりもよほど寒気を
催さずにはいられない。合理的であること、理知的であること、これに勝る恐怖が
あり得ようか。そして、その背後には理不尽とも見える約束の地への思いがある。
なぜリベラルな価値を標榜するユダヤ系と、保守的――というよりは時代錯誤の
無知蒙昧――な宗教右派が手を結びうるのか? なぜハイ・リスク‐ロー・リターンの
イスラエル国債をアメリカの銀行はこぞって買い求めるのか? グリーン・ニュー・
ディールの推進がひいてはイスラエルの外交的利益へとつながる? などなど、
高密度に展開される情報に私としては唸らされっ放しで、F.ローズヴェルト以来の
歴代大統領との関連などはアメリカ近現代史解釈として極めて革新的。
あえて難点を言えば、現代米国におけるユダヤ神学思想についての基礎情報が
欲しかったかな、というくらい。
いずれにせよ、ユダヤに限らずアメリカを知る上での必読文献とすら思える一冊。
私にとっては、この手の本では『
宗教からよむ「アメリカ」』以来の衝撃。