1977年(昭和52年)から1978年(昭和53年)にかけて掲載された「アメリカの壁」(初出誌『SFマガジン』)、「眠りと旅と夢」(同)、「鳩啼時計」(『週刊小説』)、「幽霊屋敷」(『小説推理』)、「おれの死体を探せ」(同)、「ハイネックの女」(『オール讀物』)の六つの短編を収録した文庫本(1982年5月25日 第1刷)。
なかでも一頭地を抜いて魅力的で面白かったのが、二番目に収められた「眠りと旅と夢」。南米のペルー、コロンビアの国境に近いアンデス東斜面のピラミッドに安置されていた三体の古代ミイラ。その中の一体、偉大なる神官「三の猿」をめぐって、あり得ない真実のベールが次第にめくられていき、最後に不可思議な謎が解き明かされる妙味。「人生は夢で織り合わされている」と『テンペスト』だったか(?)で記したシェイクスピアの言葉に通じる、深遠かつ壮大、ファンタスティックな物語の面白味。うーん、無類に面白いSF小説ってのは、こういう作品のことを言うのだろうなあと、読み終えてため息をつかされた短編。今さらなんですが、これは小松左京短編群のなかでも、非常に優れて印象的な名品ですねぇ。深く魅了されました。
ちなみに、ハルキ文庫の小松左京作品群のなかでは、長編では『果しなき流れの果に』が、中・短編作品集では『時の顔』『結晶星団』といった辺りが、心のど真ん中を衝かれた問答無用の傑作本。とても印象に残っています。