ナイジェリア出身の女性作家で、最年少オレンジ賞受賞作家にしてO・ヘンリー賞も受賞した若き才媛アディーチェの日本初紹介の短編集。表題作は、アメリカに渡ったナイジェリアの少女が、富める社会に反発を感じつつ、やがて異文化を理解する恋人と出逢い閉塞感から解放されてゆく心の軌跡が描写されます。思わず、じーんとするラストに心が洗われます。2〜6作では、ナイジェリアの厳しい社会の側面である、汚職権力の暴力・多民族間の争い・戦争によって生き残る為の人間性喪失、等の生々しい現実が、時に悲しみに打ちひしがれながら、でも逞しく生き抜く人々の姿を通して活写され、深く胸に迫ります。7・8作は、アメリカへ移民する夫に嫁いだ妻が、心ならずも故郷の文化を捨ててしまい妥協してゆく中での葛藤が描かれ、9・10作で再び、国を越えて通じ合う心の交流,アフリカの中の新旧世代から子孫がアメリカへ渡って受け継がれてゆく神さまが、語られます。
文化は違うけれど私たち日本人にとっても、遠い昔に忘れた郷愁が呼び起こされる、心の奥深くへ真っ直ぐに届く一冊だと思います。