アメリカ国内はもとより、世界中の多くの人々の熱狂的な支持で登場したオバマ大統領であった。しかし就任直後に、金融や国防関係の重要閣僚を前任のブッシュ大統領時代のスタッフからそのまま横滑りさせたことで、「オヤ?」と考えた人は少なくないだろう。任期の半分を過ぎて、「オバマ改革(change)」への懸念は現実のものとなりつつある。本書は、世界中の軍事費の約半分を費やしている「世界帝国」アメリカの支配構造を解き明かし、オバマ大統領の「失敗」の原因、そしてそのことが日本やヨーロッパに与える影響を分析している。
アメリカを支配しているのは、「政官業トライアングル+メディア」であることが、現実の事象や豊富な資料で実証される。例えば、戦争を遂行している主役は今や軍からアウトソーシングされた民間企業であり、リーマンショック後の金融業界には天文学的な税金が投入され、そのことを忘れたかのように新しいバブルが始まっており、鳴り物入りの医療改革では、どうやら保険業界と製薬業界が最大の受益者になる見込みである、等々。ことほど左様に、アメリカの政治を動かしているのは、「有力業界」・「業界と太いパイプを持つ官僚」・「企業献金で票を買う政治家」の政官業トライアングルと、既得権益層を代表する巨大メディアである。民主党・共和党の実質的な違いはほとんどなく、大統領はこのトライアングルを代表するピエロに過ぎず、時々目先を変えるためにオバマのような変り種も大統領になれるという訳である。
日本を熟知した著者による、日米関係の指摘は辛辣である。いわく、「日米同盟」というのは建前であり、実質的には日本はアメリカの「保護国」である、と。また日本の実情は、著者が描いたアメリカの「ミニ版」そのものである。一方、EUの政治状況も似たようなものである。
建前が「世界の民主主義国のリーダー」アメリカ、実質は「世界帝国」アメリカ、に今後どのような変化が起きるのだろうか。昨今の中東情勢は、アメリカの地盤低下と新たな混乱の時代を予兆しているようである。日本の将来を考える上で、本書が提示している世界情勢の見取り図は、この上なく貴重である。一読をお奨めする。