渡部昇一の著書はこれまで数十冊読み、近現代史関連だけでも十冊以上読んでいる。にもかかわらず本書の通読は楽しく、かつ有益であった。勿論、これまで著者が様々な場所で訴えてきた「東京裁判史観」や「南京大虐殺はなかった」、「敗戦利得者」などに関しては本書でも繰り返されている。にもかかわらず説明の文脈が異なるので、また新たな刺激はある。
歴史マニア向けの雑誌『歴史街道』の連載をまとめたモノなので、ごく基本的な近代史的知識は前提とされている。またチェスタトンなどの文芸関係も知っていた方が楽しめはする。しかし、日米関係史に多少とも興味がある向きが、通勤途上読むにはベストの書と言って良いだろう。
まず新書としても薄目の173ページに章立てを細かく立てて興味深いエピソードを散りばめててあるのが良い。適度に砕けた文体が良い(正に渡部節!)。後半、日米戦における日本側の判断ミスを数点列挙してあるのも、単なる国粋主義者でない深さの表れであろう。又、本書では「南京大虐殺」における投降兵の処分などによる万単位の犠牲者の発生を認めている点がやや意外な感があった。