「われわれは互いのことをほとんど知らないのだ」(本文より)
人は、社会を生きるうえで、本当の思いをモラルでコーティングすることを必要とする。
公共の利益のため、芸術のため、政治的健全さのため。
ここに出てくる男たちは、新聞紙編集長、音楽家、外交官などの社会的地位が高い人ばかり。
彼らはそれぞれがそれぞれの倫理に従って行動する。
だがその真ん中にあるものは、ただの嫉妬、死んでいなくなった女をめぐる嫉妬の渦巻きである。
みんな、自分を正当化するのに忙しくて、言い訳に満ちた世界。
だから最後の最後で、いきなり本音が出てきてびっくりする。
ものすごく現代的な物語。
軽いタッチで辛辣なことをさらりというのが、なかなかイギリス的なユーモアだと思う。
えせモラルをぼこぼこにする、そんなビターテイストを味わいたい人に。