来月公開の大型タイトル『アマルフィ 女神の報酬』の原作・・・ではない。
そう言ってしまっても間違いではないが、映画と小説は原案を同じくする少し別の作品。
本作はホワイトアウトのように既に完成していたものが映画化されたのではなく、映画のプロット作りに真保氏が参加。
そのプロットを元に幾多のスタッフが映画を作り上げ、一方で真保氏もプロットを元に小説を書き下ろした、という塩梅。
どちらが先でもなく、同じ母体から同時に生まれた兄弟。
舞台はイタリアローマを中心に、とある日本人外交官の活躍を描くサスペンス。
数日後に来訪してくる外相の外遊をつつがなく終えるため、現地大使館職員に鞭を入れ準備を整えるべく派遣された外交官、黒田。
役人体質の抜けない連中をどうにか焚きつけ職務に当たるのだが、そこへ旅行中の日本人女児が誘拐されたとの一報が入る。
国内ならいざ知らず、被害者が不慣れな異邦の地での誘拐というナーバスな案件に黒田は他の職務を押してまで深く関わって行く。
そして彼のはたらきの甲斐もあり、あとは身代金を渡し取引さえ終われば事件は無事解決の運びとなるはずだったのだが・・・。
とまあこんな感じに始まる話です。
冒頭からただの誘拐事件に留まらないことを匂わせる布石が打たれていたのですが、中盤以降は序盤とは打って変わった方向に話が転がり、政治思想と民族問題の絡んだ展開へと発展します。
この辺りの話の転がり方は多少強引な点が否めません。
また、一外交官にしては黒田の活躍ぶりが異常。
まあその辺は主人公補正というか、『ホワイトアウト』の富樫なんかはただのダム作業員だったのにあれだけの活躍ぶりですから真保作品としては珍しくはない?
それよりもどうにも物事を表面的になぞっているだけという観があり、各登場人物の深層が見えてこないのが物足りない。
特に犯行グループ側の人間は相当な義憤を抱えているはずなのですが、作中の描写からはそれが伝わってきません。
総じて人物の機微に乏しく、主人公の黒田に関しても「顔」が見えてこず、いまいち作品に入り込んでいけない。
口八丁に上司や役人を丸め込む黒田が愉快な序盤の方が楽しめた、というのはどうにも・・・。
ただ、強引さに目を瞑ればストーリー展開やアイデアなどに面白さはあります。
どこに魅力を感じるかによって評価の割れそうな作品。