アマテラスというと、いうまでもなく皇祖神として伊勢神宮に祀られている神。しかし、皇祖神として伊勢神宮に祀られているアマテラスに、今日の常識からしてあるまじき(!?)信仰内容と信仰実態の歴史があった。
アマテラスは大日如来であった。
アマテラスは観音菩薩であった。
アマテラスは蛇体の神であった。
アマテラスは天地開闢の根源神であった。
伊勢神宮の神域は戦場となった。
神殿は放火され、御師は自害した。
多くの人が見過ごしているアマテラス信仰の移り変わりを史料をもとに、目を疑うような事実を著者は確かな筆力で豊かに描き出している。とくに神宮の神域が戦場となり、宮域内で御師が自刃した事実があったとは…。
本書に開陳されたアマテラスをめぐる奔放な想像力と陰惨な争いの歴史は、今日きれいさっぱり葬り去られている。この落差の大きさに読者はあらためて様々な思いに駆られることだろう。歴史から目をそむけるひとは見たくないものを見せられたと思うでしょうが…。
【追記2011.3】『アマテラスの誕生―古代王権の源流』(溝口睦子、岩波新書)や『伊勢神宮の謎を解く―アマテラスと天皇の発明』(武澤秀一、ちくま新書)を併読されると、アマテラスの誕生からその後の変容までが通してつかめる。