明らかになるのは、見事なまでのアルバイト活用術である。時給900円のアルバイトたちは広大なスペースを走り回り、指示された本を探し出して抜き出す。ノルマは「1分3冊」。毎月、個人の作業データを基にした成績表が作られ、成績が良くないアルバイトは2カ月ごとの契約更新時に契約が打ち切られる。厳しいノルマとコンピューターの監視によって、アルバイトたちが一瞬たりとも気を抜くことがないよう、管理しているのである。
ドライな雇用関係によってコスト管理を徹底する一方で、アマゾンジャパンの注文件数は日々拡大している。バイト仲間から「2003年の売り上げが500億円を超えたらしい」という話を聞いた著者は、関係者への取材などから、この数字がほぼ間違いないことを突き止める。出版社との直接取引を増やそうとしていること、アマゾン限定の商品開発に取り組んでいることなども明らかにし、アマゾンという“黒船”が、静かに、着実に日本の出版業界を変質させていると指摘する。
(日経ビジネス 2005/07/04 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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とはいうものの、アマゾン・ジャパンの頑なな取材拒否という壁を前にして、著者はその売上値などに関しては二次取材や仄聞を基にした可能な限りの推測値しか出せません。アマゾン・ジャパンの秘密主義には何やら薄気味悪さを感じ、それだけにこの「潜入ルポ」(というには少々大仰な気がしないでもありませんが)というアルバイト体験録は、その苛烈な労働環境を一層おどろおどろしいものに見せています。
本書に引用されている「希望格差社会」(山田昌弘/筑摩書房)を先月私も読みました。あの書を読んだ時には、日本に広がりつつある希望格差社会というものが、どことなく観念的で実体として把握しかねる思いを抱きました。
しかし本書では、間もなく40歳になろうという男たちが、客の注文に応じて1分間に3冊の書籍を棚から拾い出すという過大なノルマを黙々とこなしながら、得られるものは900円の時給のみという実情が冷徹に描き出されています。昇進や褒賞があるわけでもなく、二ヶ月契約という不安定な雇用に怯えながら、昼食にはカップラーメンをすするという毎日。山田の書「希望格差社会」が主張する状況が俄かに明確な輪郭を持って眼前に立ち現れました。社会学者とジャーナリストとの間の、取材力と筆力の違いを見ました。
ただ、私もそして著者も「アマゾンがなくなったら困るという気持ち」(237頁)はあるのです。アマゾンで頻繁に購入を繰り返す私は、本書が描く労働現場に暗澹たる気持ちを抱く一方で、一体どうすればよいのかというジレンマもまた感じないではいられませんでした。
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