著者は,アマゾン,アップルに代表される配信プラットフォームの寡占に警鐘を鳴らしています.その根拠として日本の出版文化,音楽文化を守ることをあげていますが,よく読むと現行の出版・音楽業界のビジネスモデルを守ることにあり,ユーザのメリットを大きくして,win-winの関係を築くという観点が抜けています.
インターネットの音楽配信に関して「日本の音楽産業については・・・比較的上手に対応したと評価できるのです.・・・米国のような値崩れは起きていません(p.152-153)」と,業界擁護の観点から絶賛しています.
CDの売り上げが減少している理由を,「ネットに浸食されて」と検証を行わずに述べていますが,iPodの登場から,音楽の楽しみ方が,CDを通して聞くことから,好きな曲を選んで聞くようになったライフスタイルの変化を見落としています.iTunesは新しいライフスタイルにあったサービスであることが,発展の要因の一つですが,こうしたユーザの観点からの分析が見られません.
また,ネットの自由に関して,中国はGoogleに検閲を要求して,受け入れられないことから2010年にGoogleを中国市場から撤退に追い込みました.これに対して著者は「私は,中国のこの対応は正しいと思っています.ネットは所詮手段にすぎず,それを国内で普及させるかどうかは,国家として追及する目的で達成すべきかどうかで判断すべきだからです」と,国家によるネットの検閲を支持しています.
最後に,著者の経歴を見ると,元経済産業省の官僚で,現在はエイベックス・マーケティングの取締役を兼任しています.業界擁護になるのは,やむを得ないのかもしれませんが,本文でも自分の立場を明確にして議論を展開して欲しかったと思います.