ゲーム悪影響論における世界的第一人者の坂元教授は、ゲーム悪影響論は5年周期位で何度でも湧いてくると皮肉を篭めて述べられている。その意味でこの書のタイトル通りアベンジャー型にこの手の言説は沸いてくるということです。
ちなみに当著でも都合よくアメリカの事例や研究が紹介されているが、つい先日(2月20日)カリフォルニアのゲーム規制法は「ビデオゲームが、未成年に心理学的・神経学的な影響があることは証明されていない」という理由で違憲判決が下りたばかりである。
P97〜よりの遺伝行動学に基づく環境要因と遺伝要因の影響の多寡について、百歩譲って未成年では環境要因が強いとして、成人では遺伝要因が強くなると書いてしまっては社会性の発達には環境要因が重要だと書いても論理的におかしい。そもそも遺伝行動学における教育問題の第一人者であるピンカーやハリス氏の研究を参照願いたいが、環境要因の影響の小ささこそが問題となっている。
P101〜の過去の犯罪は金銭的な問題によるものだったという類の記述は「戦前の少年犯罪」をお読みくださいとしか言いようがない。かつてもそれこそおかしな人間による大量殺人事件は起きています。
P217〜に触れられている少年犯罪の凶悪化言説は二重の意味で間違っている。一時増加しているように見えるのは「強盗」のカテゴリーが変化したに過ぎず、この間も「殺人」の推移に変化が見られないことから否定されています。そしてそれすらもここ数年では減少して少年犯罪総数としては過去最低を記録したことはそれこそ参考文献のひとつとしてあげられている「犯罪白書2008」を読めばわかります。その「犯罪白書」が参考文献としてあげられているに関わらず、己の言説について都合の悪い部分については触れないというのは著者の良心を疑わざるをえない。