中世哲学界において大活躍したアベラール。22歳年下のエロイーズの家に、
住み込み家庭教師として入り込み、エロイーズと愛しあい、子供ができたことから
極秘結婚するも、バレて、挙句の果てにアベラールはエロイーズの親族の手の者に襲われ、
去勢されてしまう。
以来修道院生活を送るふたりのラテン語書簡がこの本である。
書簡とはいえ、論文や著書のごとく長いものも多い。第一書簡はアベラール自伝であるし、
第八書簡はアベラールの本といってもいいぐらいである。
内容は、副題に「愛と修道の手紙」とあるが、主に神学的問題が中心。
第一書簡においてはふたりの恋愛事件の詳細が紹介されているし、
エロイーズはふたりの時間を思い起こす熱い文章も書いている。
アベラールはそれに対してそっけないものの、神聖な場所でしてしまった、と書き送るなど
一応ふたりの濃密な愛の時間を覚えている様子。
だが世俗の愛にかかわる内容はこれぐらいで、修道女として生活を送る
エロイーズの質問に答えて、アベラールが論文ともいえるかたちで
神学上の諸問題や、修道院生活の規則などを、聖書を論拠に明快に述べた書簡が多い。
それまでの学者の説や、聖書の言葉などを引き合いに出しながら、女子修道院とは
かくあるべきということを、長々と論じる。
さらに、讃美歌をつくって送ったり、説教集をまとめて送ったりしている。
ここにあるふたりの書簡は、あくまでこういった信仰生活上の諸問題に関する
やりとりがメインなのである。
異常に頭の良かったアベラールの明快な論は一読の価値あり。
訳文は現代文だが、聖書の引用部分は文語訳。漢字が難しいのでところどころ
読みにくい。
巻末に訳注と解説つき。