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25 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ゆっくり歩いてたくさん水を飲む,
By Confesion Del Viento (東京都文京区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アフターダーク (単行本)
近年の村上作品の特徴である形而上学的な三人称の語りが、この作品では全体を通してとても色濃く用いられている。内容としては、現代を生きる我々にとって、目を背ける事の出来ない問題が掲げられている。情報化社会の只中で、何を信じて生きていくのか。一夜を細かい時間で区切って、一冊で描ききるという手法は新しく、妙にリアルを感じて、それが逆に怖かった。 また、村上作品には、良くも悪くも、博識なキャラクターが、文学や哲学について語る場面が印象的だが、この作品ではそういった場面が皆無であり、そしてマリの読んでいる「分厚い本」のタイトルが最期まで明かされず、マリが「ファミレスでじっと本を読んでるのも、だんだん辛くなってきたみたい」と言うなど、今までに無い現実的な描写が印象的だった。 村上氏は某文芸誌で、この『アフターダーク』について、「出来るだけ簡単な文章で、出来るだけ複雑な話を書く」と言っていたことが強く印象的だったが、正にその通りの作品だと思う。もう少し評価されてもいい作品。一晩で読み通せる長さも現代的。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
新しい文体を試みる村上氏,
By bluepasta (Brooklyn, NY USA) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: アフターダーク (単行本)
自他の関係性の不確かさとそれを埋めようとする虚しい努力、見るものと見られるものの主客の転倒、個人的な体験と総体としての事実の差、そんなキーワードについて考えさせられました。個我の独立性を保ちながら、社会内存在として生きていくことの舵取りの難しさと言えるのかもしれません。それほど長い作品ではないのに、私は一回読んだだけでは不思議と全体像が把握できませんでした。でも何度か読むうちに細部がつながっていきます。何となくオムニバス調なところが、ジャームッシュの映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」を彷彿とさせるような雰囲気を醸しだしていて、いつになくビジュアルな作品に感じました。 本書で、村上氏は今までの文体から、またさらに変化したように思います。『神の子どもたちはみな踊る』あたりから「僕」という一人称の世界から自由になり、三人称の世界へと移行しつつある氏ですが、本書ではさらに視点を自在に動かしていて、新鮮です。氏がさらに新しい文体を実験している、そんな印象を受けました。「僕」から自由になった村上氏の次なる長編が楽しみです。
8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
「アフターダーク」を媒体にしての我々のコミットメント,
By カスタマー
レビュー対象商品: アフターダーク (単行本)
誰かが「風の歌を聴け」から「風の歌を聴く」に変わった、と書いていたのを読んだが、その通りだと思う。1月17日、朝日新聞で村上春樹が「地震の後で」と言う文章を一面割いて載せていたがそれを読んだ時、この作品が胸の奥に落ちた気がした。声なき声で、エリは叫ぶが、誰にも聞こえない。当初、他人事である「視点」は、いつしか他人事ではなく、エリに深くコミットメントしている。エリを救ってやれるのは、マリなのだ。コミットメントの極端に失われてしまったこの時代だが、深い「井戸掘り」作業のその向こうで我々は繋がることが可能なのだ。最後に、エリとマリは深くコミットメントできる。
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