この前作とされる、同じ主人公が登場する
神の拳〈上〉 (角川文庫)神の拳〈下〉 (角川文庫)は上下計829ページ。
当作品は上下計523ページ。
1ページの文字数は前作が43文字×20行、当作品は40文字×17行。
値段はほとんど同じでこの分量ってのはどうよ?
いやいや、作品の質は文字の多寡とは無関係です。
それでも値段の割には手抜きがひどすぎるんじゃない?と思います。
例えば、前作ではマイク・マーティンの経歴をSIS要員が読んでいくシーンが102ページから始まりますが、当作品でも106ページから、CIA要員がまったく同じ経歴書を読み上げていく、という展開はどういうものか。前作を知る者には、単なるコピペとしか感じられません。それに、テリーよ。前作で、うかつに兄の名前を口に出して大いに後悔したんじゃないのか?なんで同じことを繰り返す?マイクの名前をカンパニーが知ることになるための、いい手段をフォーサイスが思いつかなかっただけですか?
そして人物描写が極端に平板です。というより、何も書かれていないに等しい。
前作ではフセイン政権の革命評議会メンバーを詳細に描くことで「敵とはいえどもやはり人間」という、東西冷戦時代からのフォーサイスの執筆スタイルが貫かれていた。そして脇役にもレジェンド(経歴)を用意し、くどいほどの描写を行っていました。
で、当作品はどうでしょう?敵方で魅力を感じる人物が1人でも登場しますか?脇役は文字通り脇役で、名前があるだけの存在ではないですか。前作のエーディト・ハルデンベルクやドン・ウォーカーといった、出てこなくてもストーリーには影響が無いだろうけれど、しかしながら読後感の残る人物はどこにいった?執筆の気力が続かないのでしょうか?
私が初めてフォーサイスを読んだのは、25年前の高校生時代の
ジャッカルの日 (角川文庫)でした。以来、新刊が出るたびにまっさきに買ってきました。ところが
イコン〈上〉 (角川文庫)で引退したはずのフォーサイスの復活第一作
アヴェンジャー (上) (角川文庫 (フ6-24))で、死ぬほど絶望した。やはり、フォーサイスはナイジェル・アーヴィン卿と一緒に引退しておくべきだったと思います。
フォーサイスよ、今度こそ断筆せよ。古来のファンをこれ以上、失望させないでください。