これまで、アフガニスタンと呼ばれる地域の歴史は、非常に中途半端に扱われてきたといえる。特に本書を見てから、その思いを強くした。従来出版された「アフガニスタンの歴史」とは、古代中世が極端に少なく、事実上近代以降の、アフガン人国家誕生以降を描いたものに限られていた、といえる。また、古代中世に関しては、アフガニスタンを発祥とする国家が殆どなく、この地域は、古代中国の司馬遷において「高附は、大夏、安息、印度のいづれかが取る」と記載されていたように、その後の歴史も、殆どイラン、インド、中央アジア勢力のいづれかが支配した。アフガニスタンに拠点を持つに至った勢力も、発祥は別の土地だったりしたため、この地域の歴史は、どうしても、支配した帝国全体の歴史として語られてしまい、「じゃあ、その帝国の支配時代、アフガニスタン地域はどうだったのか」が、わからないのが普通だったとさえ言えよう。
本書は、そうした歴史の隙間を埋めるがごとく、当地域を通過した民族すべてが、当地域で何をしたか、に言及してゆく。アケメネス朝に始まって、マウリヤ朝やサカ人、パルティアやササン朝、イスラームの到来や、モンゴル時代やティムール時代まで、殆ど言及されたことのない時代についても、詳細に、殆ど等分量で記載してゆく。通常の歴史本が、クシャン朝や、グレコ・バクトリア王国、ガズナ朝やバーブルなどに重点を置き勝ちな点と比べると、これは驚くべきことである。このような次第だから、アフガン人の建国には350ページにならないとたどり着かない。その代わり、建国以降は150ページくらいだが、索引参考文献、註を含めて770ページを超える大部の書となっている。
難点といえば、あまり意味をなさない註が多い点と、価格だろうか。5000円以下だと嬉しい。