テレビ画面に突然現れた「アフガニスタンで邦人拉致」の字幕テロップ。あの悲しい事件から1年が経ちました。
この本には、農業支援を行うNGOのメンバーとして、戦乱の続くアフガニスタンに自ら赴いた伊藤和也さんの5年間の記録が記されています。
表紙を捲るとまず、伊藤さん自身の撮影による、何枚もの現地の子供たちの写真が続きます。
荒れた土地をバックに、砂にまみれた顔をほころばせる少女。その手には伊藤さん達が育てたブドウが握られています。
「アフガニスタンの子供達が、将来食べる物に困らないように力になりたい」
そんな志をもって日本を発った伊藤さんの思いが、苦労の末に実をつけた証のように感じます。
続く1章・2章には、天候も文化も違う過酷な環境の中で数多の失敗を重ねながらも、現地の人々の協力を得ながら徐々に成果を出していく様が、報告書として伝えられます。
活動の報告として短く纏められた文章の裏には、きっと我々には想像にも及ばない苦労があったことでしょう。しかしながらそこからは、人のために汗して働く伊藤さん達メンバーの、いきいきとした充実感が感じられました。
しかし、それ以降の章は一転、伊藤さんのご家族やNGOメンバー、現地の人々からの追悼文が続きます。
生前の伊藤さん写真を交えて読むにつれ、涙が止まらなくなりました。
今回の事件を肯定するつもりは一切ありませんが、伊藤さんのように人のために人知れず働く方がいることを知り、私はとても勇気を与えられました。
寡黙な伊藤さんは、讃えられ英雄扱いされることなど望んでいないと思いますが、やはり彼の生き方は実直で、素晴らしい。
私は世界情勢に疎く、困っている人々のために海を渡る勇気もありませんが、伊藤さんの言うように「平和を願う気持ちは皆同じ」ことを意識すれば、明日からの生き方も少し変わるかもしれません。
願わくば、この本をたくさんの方に読んで頂きたい。心から思います。