今のハリウッドでは絶対に作れない映画のひとつではないでしょうか?
コメディというジャンルはアクション、SF、ホラー映画と並んでアメリカ人の好きな分野ですが、今のコメディはちょっとアクの強いコメディアンガが度を越した悪ふざけをしているような映画が多く、この作品のようなハート・ウォーミングな人情コメディを撮れる監督も、俳優もいなくなってしまった。
「深夜の告白」「サンセット大通り」などのシリアスな内容の作品で一流監督になったビリー・ワイルダーにとっても後期のコメディ映画の中では最高傑作でしょう。アメリカでは「お熱いのがお好き」の方が高評価であることが多いようですが、個人的にはこちらの「アパートの鍵貸します」に軍配を上げます。
ジャック・レモンは動きが若々しくて、風邪をひきながら上司に調整の電話を掛けるところの一人芝居なんか最高です。シャーリー・マクレーンは、美人というよりはファニー・フェイスだと思うけど、この映画ではすごく可愛くて魅力的。脇のキャラクターでは隣人の医者が面白く、毎日のように部屋の外に置かれる多量の酒瓶と女を連れ込んで騒ぎ声でジャック・レモンのことをあきれて見ているのに、いざとなると助けてくれちゃう人の良さで、コメディ映画はこういう脇役がいないと面白くならない。
会社の上司の逢引に自分のアパートの部屋を貸す独身男の片想いを描いただけの単純なストーリーですけど、割れたコンパクト、テニスのラケット、シャンパンの瓶、帽子などの小道具の使い方は上手く、脚本の段階で相当、時間をかけて頭を使って練り上げていると思います。
古い白黒映画だけど、今観ても十分面白いし、小道具の使い方などは何回みても新しい発見がありますよね。