なんという演奏でしょう!最高の指揮者と完璧な演奏家、天上の声を紡ぎだすふたりの歌い手、そして迫力ある混声合唱、これらが渾然一体となって生み出される輝かしきひとつの命。「あなたはよみがえる 瞬く間によみがえれ」のくだりでは泣けて泣けて仕方がない。まさか、クラシックを聴いて自然と涙がこぼれてくるなんて!
ひとつ狂えばすべて狂ってしまいそうな音楽を、楽団員たちはすべて絶妙なタイミングで危なげなくこなしていきます。1時間20分もの長丁場、魂を削って的確な指示を出し続けるアバドという指揮者も、これはただものではない。会場は、彼の渾身の一振り一振りで魔法をかけられているかのごとく、荘厳な雰囲気に満ち満ちていました。歌い手では、ソプラノもいいですが、アンナ・ラーションというアルトが素晴らしい。もうすべてこの人の声に身を委ねてどこまでもどこまでも流されてゆきたい…。
演奏後、拍手がまったく鳴りやまないのも頷けます。感動のあまりハンカチを出して瞼をぬぐうかたもいれば、両手を眉間に捧げるような仕草をして、演奏の余韻に浸っているかたもいる。もちろん最後はやんややんやのスタンディングオベーション!
もう、どんな形ででもいいからこの感動を伝えずにはいられない。カメラワークに多少歯がゆさを感じる部分はありましたが、それを補って余りあるほどの内容です。クラシックなんて、と思っているあなたにこそ聴いてほしい。そして、マーラーの宇宙を体験してほしい。1人でも多くのかたに聴いて、感じてほしい1本だと、胸を張ってお薦めできる作品です。