1984年にインドのボパールでユニオンカーバイド社が操業する化学工場が起こした事故をベースにした物語。この事故に関しては、ユニオンカーバイド社と住民との間で和解が成立しているものの、汚染はいまも続いており、住民の体をむしばんでいるようだ。また、和解したとはいえ、ユニオンカーバイド社は責任を認めていないし、事故調査に対するさまざまな妨害も行ったという。アメリカ政府も無関心を装った。本書の著者は長年にわたって住民の支援を行ってきたそうである。この事実が、本書をとてもリアルな物語にしている。事故で汚染された町、そこに生きる貧しい人たち。物語は、事故によって背中が曲がり、両手を使わなければ歩けなくなったため、自らを動物と称する青年の独白によって進む。住民と化学工場、工場と結託した政治家との戦いが描かれる。その戦いは勝利に終わるわけではない。主人公は最後に語る。「すべてのことは過ぎ去るけれど、貧しい者たちは残る」。この物語には終わりがあるけれど、現実の事故はまだ終わっていないのだ。でも、読後はなぜかさわやかだ。主人公の心が解放されたように思えるから。