ノージックの代表作でもある本書は、ロールズ『正義論』と並んで有名だが、内容の毛色は随分と異なる印象を受けた。
ロールズが「正義」とその構造を論じているとしたら、ノージックの主題は(副題にもあるように)「国家」の性質である。
思考実験やアクロバティックな論理展開を通じて、知的挑発とも言える徹底された論考をそこでは展開してくれる。
ノージックは「社会契約なき自然状態」とも言われるように、自然状態からいかにして「自然に」国家が発生するかを説明する。
そこで用いられているのが「保護協会の出現」という方法である。これによって超最小国家が形成される。
超最小国家から最小国家への移行はいろいろな論者から批判されているのは知っていたが、個人的にはここの論理展開は相当に巧妙で面白いと思った。
彼は「賠償をすることによって権利を制約すること」がどのような場合に認められるかを考察し、「リスクを事前に排除する」という目的がどこまで認められるか、という議論からこの移行を説明している。
こう書くとすごくさっぱりしているようにもみえるが、恐怖の問題、経済的侵害と身体的侵害の違いなど、素朴な観点から徹底的に考えつめている。
後半はロールズやその他平等主義批判だが、ここはやや細部に立ち入り過ぎている感も覚えた。
付随して論じられている細かなテーマもなかなか面白い。
動物の権利、快楽機械の問題、刑罰の正当化の根拠など、それぞれノージック一流の洞察がされている。
彼の議論はどのくらい「真に受けるべきもの」なのかはよくわからないが、一つの知的挑発としては抜群に面白い。
考えるヒント、洞察の手がかりとしても彼の議論は非常に有益であろう。