92年1月号から04年4月号(「休刊号」)まで著者が『噂の真相』誌に連載した、主にAVを論じたコラムを収録している。ほぼ全ページで著者自身が脚注という形で回顧的に自分の文章にツッコミを入れたり、修正を施したりという構成から見て、コラムの現在的な批評性というより、史料的価値にポイントが置かれた編集。
ただ、連載とは別に発表された原稿を再録した「『生撮り』の誕生」(p112)は、ちょっと興味深い問題を提起している。
ピンク映画が誕生した60年代前半以来、ポルノはドラマ物主体だったが、80年代のAV時代に入り「セックスをドキュメンタルに撮影したもの」=「生撮り」に人気が集まった、と著者は言う。そしてこの「生撮り」スタイルを広く認知させたのが代々木忠監督の『ザ・オナニー』だと指摘した上で、さらにその成立経緯を追うことによって、代々木におけるビデ倫に対する過敏さや、代々木の先行者としての小路谷秀樹の影響などを明らかにしていく。「セックスそのものよりも、セックスをオブラートのように包む『性的形質』へより力強く向かってゆく日本のAVの性向は、ここから発生したのかもしれない」(p119)。
著者自身は、「生撮り」的演出が「AVから一貫性のある思想性」(p119)を奪ったと述べているし、他のコラム中でもAVにおける演出性を重視する傾向が強い印象を受ける。この観点を取れば、『のぞき学原論』の三浦俊彦などは宇宙的普遍性どころか、日本という地域性にドップリ漬かっているという話になるのだが、さて…