巻頭『はじめに』の部分で、著者は、「ややもすれば『軽心理学』(ポップ・サイコロジー)程度にしか受けとめられていない『アダルト・チルドレン』と『共依存』を、伝統的な心理学や精神医学の視点で学術的にとらえなおすことにしたい」と述べています。が、実際、アメリカで誕生したそれらの概念やそれらを取り巻く諸問題が、この本では、よく整理しまとめられています。
『はじめに』の続く部分で著者は次のように記しています。「『アダルト・チルドレン』や『共依存』は、離婚率が50%を超えた米国で出現した『機能不全家族』を背景にした病理的現象ともいえる。それらは、伝統的家族が崩壊し、個人主義が台頭した1980年代に、米国で社会運動化した。『機能不全家族』のなかの『家族的トラウマ』で、子どもたちは傷ついて成人し、『アダルト・チルドレン』や『共依存』となり、『機能不全家族』が再生産されつづけている。」「拒食症や過食症が、米国に遅れて10年ぐらいしてわが国に上陸したように、『アダルト・チルドレン』や『共依存』が頻出する日がやがてやってくると思われる。」
この本が発刊されてほば10年になります。日本の離婚率もうなぎのぼりです。実際のところ、予見されていたとおり「機能不全家族」が増え、そして「再生産」されているように思いますが、いかがでしょうか?
「機能不全家族」とその産み出す「症候群」を知っておくことは、山奥に隠棲して仙人になる志しを持たないのであれば、これからもずっと人の世で暮らしていくつもりであれば、ぜひ必要なことのようにさえ思えますが、その点で、日本における実例もあげつつ説明しているこの著作は良い導きとなるように思います。