このアルバムは、前2作とは異なった手触りをもっています。
かなりロック寄りになり、暗さが減っているのです。これがどう受け止め
られているのかは分かりませんが、私としてはとても聴きやすい、素晴らしい内容のアルバムだと
思います。
そしてもう一つ、今回はビンテージの機材を使って音作りをしたそうですが、とにかく音が
温かくて柔らかい。ちょっと他では聴いたことのないくらい温かい音がでています。特に低音に
顕著ですが、この音を聴いていると胸にぽっと灯がともるような気がします。
曲はイントロに続いて始まる『Go Ahead』の低音の響きが素晴らしいです。どっしりとして
いて、それでいて柔らかい名音です。続いての『Superwoman』は女性のために書かれた曲
ということですが、優しいメロディと次第に高まっていくヴォーカルがまさに女性そのもの
という感じがします。声の伸びが素晴らしく聴き惚れてしまいます。
そしてファースト・シングルの『No ONe』。これはかなりロック色が強いですね。ベースが
とても印象的です。ほんとに楽器の音が温かくて包み込まれます。
話題になるだろう『レッスン・ラーンド』はジョン・メイヤーをフューチャーリングしています。
シンプルな演奏ですが、ドラムとベースがしっかりと支えているなかでアリシアが気持ち良さそうに
歌います。そしてジョン・メイヤーのヴォーカルもそっと寄り添い、相性の良さが分かります。
ポップな感じで始まってサビでドラムのパワーと共に盛り上がっていく『レックレス・ラヴ』、
ドスドスと鳴るドラムと、重いベースのコンビネーションが特徴的な『ウェア・ドゥ・ウィ・
ゴー・フロム・ヒア』などとにかくクオリティの高い曲が並びます。
今回のアルバムは最初にも述べたようにやはり明るい、ポップな曲が多いです。
これは今までのアリシア・キーズのイメージとは大きく異なるところだと思います。リズムに
関してはR&B/ヒップ・ホップを消化したもので、その点では以前と同じなのですが、音の感触が
明らかに変わっています。このアルバムでそこが一番大きなポインドであり、このアルバムの
カラーを決定している最大の要素でしょう。
曲の完成度も高く、アリシアのヴォーカルも以前にも増して表情が豊かになり、さらに
ヴィンテージの機材を導入することでとろけるようなサウンドを作り出したこのアルバムは、
これからずっと名盤として記憶されていくことになると思いますし、さらにいつでも聴きたい
と思える希有な名盤だと思います。このアルバムでアリシア・キーズのことが大好きになりました。
彼女の代表作を訊かれたら、迷うことなく本作を薦めたいと思います。
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