「万有引力とは 引き合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる それゆえみんなは求めあう」(谷川俊太郎『二十億光年の孤独』)
本作の題名は、万有引力の法則を記述したニュートン(本作にも登場)の著書「プリンキピア」から採られた。完結編である下巻では、正にこの「引き合う孤独の力」が、圧倒的なカタルシスを読者にもたらす。
上巻で明かされた生徒会三姉妹の末っ子、茜の閉ざされた心に引き続き、主人公ヒカル、ヒロイン円、晶、そして本シリーズから登場の香織、カミーユ、そして彼女たちに関わる人々、それぞれの抱えた孤独が、対ヴァンパイアの戦いとその来歴の中で明らかにされる。
そして、自己の孤独や悲しみを他者を傷付けることで紛らわす憎悪の連鎖を断ち切ろうと望みつつ、他人を傷付けてしまう自分に絶望し、自分の命や自分の意志を投げ出すことでせめて他人を救おうとする彼女(彼)達の姿が描かれる。しかしそれはかえって周りの人を悲しませ、悲劇の連鎖を生むものでしかなかった…。
これらの連鎖を乗り越えて、主人公は地球の引力圏に踏みとどまることができるのか…?
…などと(ネタバレを避ける意味もあって)抽象的なことを書き連ねましたが、とにかくアスおとシリーズの1・2巻や評論系の著作とは打って変わった、本田透の情熱的な筆致と古今東西の豊富な引き出しに存分に酔える作品です。
主人公の幼馴染ホノカの心の内、乙女塾や大豪印家、ヴァンパイア周辺の超科学の行方など、まだ描かれていない重要テーマも大いに残っているので、続編も是非期待したいところです。