本書は、最新のアジャイル開発の手法群を、
全体のバランスをうまくとりつつ、平易な例を用いて、解説している。
網羅的でありながら、一方でシンプルな記述になっており、
執筆の過程で慎重に取捨選択や説明の洗練を行ってきたことが伺える。
日本語訳について、読みやすさが十分に考慮されており、
多くの人に受けいられる文体になっているのではないかと感じる。
アジャイル開発にすでに取り組んでおられる人にとっても、
全体を網羅したこの本を読むことで、要件定義や計画や見積もりに関する
新しい技法を知ることができるのではないかと思う。
また、アジャイルに取り組む予定はないが、知識として認識しておき
たいマネージャの方にも、この本を手に取ることをお勧めしたい。
アジャイルがなにを重視しているのか、既存の手法を切り捨てることなく、
誠実に語っているため、各種の啓蒙書を「宗教臭い」と敬遠しておられる
方にも、読みこなせるのではないかと思う。(ただし、評論家として差異を
まとめた資料ではなく、あくまで実務者向けなので、ソフトウェア開発の
現場ではない方には、ちょっと難しいかもしれない。)
本書を通じて、できるだけ正確で誇張のない知識を身につければ、
現在の仕事の進め方について点検するきっかけになるのではないかと思う。
なお、各章に、師匠と弟子の会話の形態をとったQ&Aがあるが、
これがまた現場で一般的におこりがちな質問を採用していて、
ハッとさせられることも多いと思われるので、ぜひ、
各章末までしっかりと読んでみることをお勧めする。