編者のセレクションの素晴らしさで
多彩かつ多才なディッシュが身近に感じられる傑作短編集。
邦訳は意外に多いディッシュだが、連作とトースターを除くと初めての本格的短編集のはず。
いずれも傑作で技巧派といわれるその表現力や構成力、
知性的で意地悪なストーリーやアイディアが堪能できる。
強烈なブラック・ユーモアを体験したい人には
ホームコメディ「争いのホネ」、母子愛もの「リンダとダニエルとスパイク」
自己啓発もの「国旗掲揚」、ジェンダーもの「犯ルの惑星」がオススメ。
もう少しライトな方がいい人には奇妙な味「死神と独身女」、
コミュニケーションについての一考察「話にならない男」、
現代美術もの「第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場跡」
あたりかな(え?どっちにしても冗談がきついって?まあね)。
気がかりなのは、そうした作品からは以前からの冷たい作家という印象が
ぬぐえないかもしれないこと。
ただ通して読んでみると意外と冷たくは感じれらない。
一部の長編のような難解さがないこともあるが、
心象風景の描写が見事な表題作(最高!)や内省的な「リスの檻」では
孤独や書くことについての苦悩に満ちた作家の生活が感じられるからである。