本書だけを読むと「まあそうだよね」との印象をもつが、著者がわが国におけるワークライフバランス(WLB)の首唱者のひとりであることを考え合わせるといささかの違和感と同時に妙な納得感が生じる。
違和感の一つは、妊婦の(そして産後の)ハードワークに明らかに肯定的な評価を与えていることだ。そこまで働くことが求められる社会環境をWLBの専門家としてどうして無批判でいられるのだろう。無論WLBとは、単に仕事をしないでプライベートな生活を重視しましょうという主張ではなく、むしろ密度の濃い効率的な仕事を志向するものであることは理解できる。厳しい経済環境も仰せのとおり。その意味で、著者の立論、筆の運びは説得的でもあり、著者個人の体験談も交えて読ませる文章に仕上がっているとも思う。
しかしながら、その上でWLBを高唱される方々が実は、相当程度仕事をし、かつ(仕事が)出来る謂わば意欲と能力に恵まれた方々であることが、本邦におけるWLBがどうにも、いささか胡散臭いとパンピー(一般ピープル=普通の労働者≒貧乏人)には感じられる所以ではないかとの印象を禁じえない。そもそも、WLBの発祥は英国の「使用者」(政府)側の論理から提唱されたものであり、ホワイトカラーイグゼンプションと同根である。本レビューは、理屈的には、いかようにも論破されうる感想だと我ながら思うがどうにも皆が出来るわけないだろうという印象が拭えない。事実、本書には高学歴で裕福な親(著者)が、子供にも稼げる力を付けるため二人いる子供のうち、先ずは上の女の子一人の教育に年間300万円以上もかけている(208頁)というパンピーにはため息の出る話が出てくる。 逆に言うと、子供の頃そこまでしてもらわないと、多くの平均的な日本人は、今後グローバル市場で稼げる人材にはなれない可能性が高いということだ。つまるところ、やっぱり貧乏人の子供は貧乏になるということである。事実認識としては正しいのかもしれない。だが、私には、著者が多くの人には出来もしないことを提唱し、「私は出来るもん!やってるもん!皆もやれば!できるんなら!」と自慢しているように感じてしまう。同じくWLBを主唱する勝間某女史、小室某女史の主張及びその心性とも驚くほどよく似ている。残念というべきか、ほとんどの日本人は、著者のいうような意味でのアジア人材にはなれないだろう。今の子供もほとんどは「アジアor世界で稼ぐ人材」にはなれないだろう。しかし、その上で・・・、若い人や幼い子供を持つ人は、本書に展開される事実や考え方を知るべきであると思う。その意味で読むべき本だ。嫌味なレビューでごめんなさい・・・