一言で言えば、押井守という人がプレイしているビデオ・ゲームの画面を横から観ているような退屈さが全編を貫いている。つまり身内であるゲーム仲間で彼がどのようにプレイするかに興味がある者にとっては細部まで楽しめるのであろうが、彼に興味がなく、単にストーリーとしての映画を観たいだけの人々にとっては白ける以外の反応はできないだろう。おそらく余程のフォロワーの人でも、彼の「作業」ではなく、純粋に彼の「作品」に興味を持っているタイプの方は後者寄りになるのではなかろうか。
アヴァロンの仮想空間という設定を引き継いだアヴァロン(f)というヴァーチャル・ゲームの世界が舞台ではあるが、アヴァロンの続編だと思って鑑賞すると痛い目を見るだろう。本作は決してアヴァロンと同じ作品軸にある訳ではない。どちらかというと押井がそれまでに手がけたアサルト・ガールのシリーズという要素をアヴァロンというこれまた一つの要素の上で展開させた、良く言えば総集編的な、悪く言えばパロディ的な作品である。「真・女立喰師」のケンタッキーの日菜子ことカーネル(佐伯日菜子)がそのまま賞金稼ぎとして登場し、テムジンを操ってしまうので、押井の作品がある程度分かっていれば多少は興味も持てるのだろうが、本作を劇場でご覧になった方のうち何割くらいがそれに注視できたかのだろうかと思うと、作品としての完成度に疑問を投げかけざるを得ない。劇場公開というのは文化祭のような習作発表の場とは違うのだから。
黒木メイサ、佐伯日菜子、菊池凛子といった比較的注目を集めやすい女優陣を起用するなら、フリークたちに媚びるだけでなく(そういう諸要素もあってもよいものの)、もう少し内容的にマジョリティーにサービスをしてもよかったのでは無いだろうか。本作は彼もまたただのフリークに過ぎないことを大衆に知らしめただけのような印象が残る。
映像コーデックはMPEG4 AVCであり、ビットレートも高めなのだが、あまり精彩な印象を受けない。アヴァロンのように幻想的な映像ならそれでもよいのだが、本作にはその要素もないので残念だ。どうせストーリーが無いなら、映像の力で引き込むべきなのにそれも出来ていない...。PQ3.5/5。
音声コーデックはDTS HDMA 5.1chであり精密なサウンドではあると思う。しかし、本作は英語での掛け合いが多いのだが、どうもその発音がもごもごとしており聞き取りにくい。作品意図もあるのだろうが、鑑賞者のフラストレーションがたまる要因の一つになっているだろう。
このように全面的に良い出来とはいい難い割りには高い価格設定なので、押井が手がけた作品がHDで出たらすべて購入したいという方以外には積極的には勧められない。まずレンタルでDVDを視聴して、本作が許容できて、更に良い画像や音声で楽しみたいならこのBDを購入すればよいだろう。