まだデビューする前、ジミがぶらりと訪れた英国のある楽器店でここに収録された"Little Wing"のプロトタイプを試し弾きしていた、しかも相手をした店員がポール・コゾフだったという逸話がある。その驚きは半端ではなく、類い稀な情感のギタリスト・コゾフに生涯を通して影響を与えた事件だったらしい。童話のような詩、簡潔な美しい泣きも素晴らしいが、凄いのはイントロだ。イエス加入前のスティーブハウがリードギターを務めた何かのライブで、ジミが飛び入りベースをこなし皆茫然となったそうだが、ここでも常人に浮かぶべくもない低音弦の使いこなしで魅せられる。何度聴いても出るのは溜息ばかりで、30秒あまりのシンフォニーと讃えたい気持ちになる。
アルバムとしては、頭に鳴り響くミューズからの贈り物を開放した前作をほぼ継承する作品だが、レディングの10を収録するなど変化が見える。Jazzyなお喋りワウワウ"Up From The Skies"や気だるい旋律とジミのラップによる流れるイメージが印象的な"Castles Made of Sand"など黒人アーティストとして60年代を代表するイコンの扱いを受けながら、実は最も遠い無国籍な視点で音楽を創造していた事にも改めて気付く。エフェクターを使い過ぎると時代が知れてしまう気がするが、ジミの場合は全く違うのが驚き。彼とエレクトリックレディの不思議な関係だ。