1953年に生まれ、秋葉原近辺に育ち、富士写真フィルム勤務の後、英国に留学し、NPO産学連携推進機構理事長を務める、問題学・知財マネジメント・先端人材育成・産学連携等を専門とする研究者が、数年間にわたる秋葉原再開発・産学連携と街づくりに関する自己の構想と実践と知見の記録として、2007年に刊行した本。秋葉原(外神田)は、戦後のラジオ街から高度成長期の家電の街へ(テクノオタク中心)、更に低成長期以降はパソコン街(ハードウェアオタク、ソフトウェアオタク中心)となり、今やオタクとロボットの街(コンテンツオタク、萌え系オタク中心)に変身しつつあるが、変遷の底流にあるのは一環して部材の街としての特性であるとして、著者は技術と産業活性化(インフォマティクス)と街づくり(共・私領域の形成)の結合を、秋葉原再開発の主題に据える。そのため、著者は第2章で秋葉原の街の特性を把握した後に、地元や行政との地道な話し合いを通じて、具体的な提案・実践を多々行っている。例えば、ベンチャー企業の発展段階に即した多様な支援、共同利用可能な経営管理会社の創出、国際的な科学技術関係者の社交場づくり、技術の常設市場ないし定期市の設置、多様な用途をもつアキバタウンカードの発行、技術(特にロボット)の体験教育と実演販売のイベントの開催、理科教材・教具専門店の設置、電子ペーパーによる避難方法の表示、神田川親水空間形成、安宿・観光案内所・エスニック屋台の整備、バリアフリーマップ作成等々の提案・実践である。著者の幅広い知見に基づくこれらの具体的な構想の数々は、興味深く説得的であり、本書の大きな魅力である(防犯カメラ活用の提案については保留したいが)。また本書では、再開発失敗の要因についてもしばしば指摘されており、街づくりを考える上で参考になる。