URCにおける1st『教訓』、2nd『親愛なるQに捧ぐ』、ライヴ盤『やぁ』に続く1974年11月発表の3枚目のオリジナル・アルバムで、ベルウッドに残した唯一の作品。彼はURCでのプロテスト・ソング「教訓I」が代表作だが、このアルバムでの彼はいわゆる「シンガー・ソングライター」タイプだ。彼自身も「プロテスト・フォーク歌手」という古いイメージからの脱却に意識的だったようで、「かかしのブルース」という曲では「ベルボトムは大嫌い/ギターケースだって重たけりゃいつだって捨てられるんだよ」という一節があったり、「つれづれなるままに」では「窓から抛り出せるものは/すべて昨日捨てました」と歌われる。音楽的にも鈴木茂とハックルバックとの共演で米国南部風のアレンジを聞かせ、新境地を開いたと言える。もちろん、そればかりではなく、自身の弾き語りや中川イサト(g)との息の合った演奏はさらに磨きがかかっている。「北の果てから南の街へほっつき歩いて~」と歌い出す1曲目「ラブ・ソング」や「あした天気になあれ」、「あの娘と長崎」は、古い汽車に乗って気の向くままに旅をしているような、そんなのどかな雰囲気の曲。しかし、アルバム中で一番すごいのは、ハックルバックを従えてのトーキング・ブルース「2分間のバラッド」だろう。当時、加川の良きライバルだったといわれる吉田拓郎の「金沢事件」を扱ったものだが、この曲の後半の歌詞は歌詞カードにも掲載されず、レコード会社の自主規制(?)で「ピー音」を連発するのだ。過激な詞と相俟って炸裂する鈴木茂のギターが最高に気持ちいい。でも、そんな過激さなんてどこ吹く風、って感じの無人駅をあしらったイラスト・ジャケットが何ともクールだ。