題名からして「極悪非道」ですよ。(笑) ヤクザ同士が金と出世のため、お互いに利用し合い、裏切り合い、殺し合う。ストーリーは極めて単純。
子分から親分、その上の大親分まですべてが腹に一物をもつ。油断しているとハメられ、弱点を見せると付け入られる。あらゆる権謀術数が渦巻く中、任侠や男気といった義理人情は微塵もない。誰が悪党で、誰が本当の悪党で、誰が一番の悪党か。裏切りと駆け引き、ハッタリとだまし合い。ストレートな欲望をむき出しにしたヤクザの行動様式はある種の潔さすら覚えます。
登場人物は基本的に全員悪人で、人を傷つけることを何とも思っていない。性悪説に基づいた人間観は、決して不快ではない。むしろ徹底ぶりが気持ちいいほどだ。他人を踏み台にしようとする嫌らしさも、とことん突き抜けた先には、獣同士の争いのようなダイナミックさが見えてくる。このあたりは、同じ暴力を描くにしても、先週公開の「ヒーローショー」の井筒監督のアプローチや表現方法とは全く違います。
北野武監督は、インタビューで、「どつき漫才」を例に出し、暴力は笑いと同じだと語っています。漫才でどつかれれば笑いが起こるが、どつかれる方が流血すれば、暴力として恐怖を呼ぶことになる。見せ方によっては、「どつく」という行為は、暴力にもお笑いにもなる。また別の番組では、暴力は描写が過剰過ぎるとホラーになってしまうとも語っていた。ホラーは恐怖だが、血しぶきが過剰に飛び散るスプラッター映画は時として笑いに転化する。笑いにも恐怖にも狂気にも成り得る暴力を、いかに斬新に、痛みが伝わるように表現するか。本作は、エンタティンメントであると同時に、北野武監督による暴力論であるとも言えるかもしれませんね。
本作は北野映画としては、セリフが多く、怒鳴ったり凄んだりする場面が連続します。ビートたけし、石橋蓮司ら、いかにも(?)ヤクザな面々だけでなく、三浦友和、椎名桔平、加瀬亮らが、意外に役にはまっているのが面白い。特に、英語ペラペラのインテリヤクザを演じた加瀬亮は、底知れない冷たさも感じさせて好演。また、北村総一朗が、好々爺然とした外見とは裏腹にどす黒い陰謀を隠し持つ男を不気味に演じています。
暴力描写は、凄いです。切れないカッターナイフで指を詰めさせたり、耳の中に箸を突っ込んだり、歯医者のドリルで口の中をかき回したり、もはや猟奇的と言うしかない描写まであります。ここまでくると一種のホラーで、怖いけど、なぜか笑えたりもします。
暴力をエンタティンメントとして成立させ、他には何も付け加えようとしない。付け加えないどころか、余計なものを一生懸命削ぎ落とそうとしている。その姿勢は、B級バイオレンス映画として実に正しいと思います。
『最後に誰が生き残るのか?』的な面白さもあって、最期まで飽きさせない展開でした。ネタバレ気味ですが、結局、暴力に走るものほど寿命は短く、死屍累々の果てに常に冷静さを失わなかった者だけが生き残るということか...。