主人公の八神瑛子は、上野署きってのエース捜査員。しかも(お約束どおり)容姿端麗。
ただしそこは深町作品のヒロイン、ありがちな女性刑事像とは180度異なる。
前作『ダブル』に登場した女性刑事・園部佳子もアウトロー的なところはあった。
だが、その根底には「正義」が息づいていた。対して本作のヒロインは、
あらすじにも書かれているように、ヤクザや中国マフィアとも手を組む超悪党なのだ。
彼女がダーティに染まったのは、夫の死を自殺と断定した警察組織への憎しみが原因だという。
ならば少しは同情の念も湧きそうだが、そういった心情には最後までならなかった。
もちろん作者の計算だろうが、ヒロインの言動がやたらと鼻につくのだ。
それにまったく「人間らしさ」が感じられないことが個人的にはマイナス要因となった。
とはいえ物語自体はよく練れているし、深町氏お得意のバイオレンスな描写も楽しめるので、
ノワール好きの人なら買って損はないと思う。値段もボリュームもお手ごろだし。