逸脱研究の古典、非常に面白かった。
本書の「マリファナ使用者」へのインタビューと「ミュージシャン」の参与
観察の例は質的な調査方法の事例としてお馴染みである。
犯罪社会学や病理社会学といった分野や社会的弱者(マイノリティ)を対象
にしたエスノグラフィーに関心のある人は絶対に読むべきだと思う。
また、訳者である村上直之氏が本書末に「解説」を書いている。これも非常
に良くて、ベッカーの業績が社会学のなかでどのように位置付けられるのか
を解説してくれている。
私はラベリング理論については、名称と簡単な内容を知っていた。しかし、
本書で詳しく読んでみると、自分が把握しているよりももっと興味をそそら
れるものであった。私の理解はラベリング理論を非常に矮小化してとらえた
ものだったといえる(勉強不足は恐ろしい!)。
ラベリング理論を私みたいに、すなわち次のように理解している人は一読の
価値あり。
「逸脱者は、逸脱というラベルを貼られて初めて逸脱者となる。逸脱を
作り出しているのは社会(マジョリティ)であって、逸脱行為そのも
のではない。」
ラベリング理論が注目するのは「逸脱行為とそれへの(マジョリティ側の)反
作用」、「規則の事業者(アントレプレナー)と執行者」などで、上のラベリ
ング理論の理解は間違ってはいないものの、まったく著者の意図するところが
省かれている。上に書いたようなお粗末な理解で私は読み進めていたため、
ラベリング理論が射程に入れようとしていた話の全体像が見えてくると興奮せ
ざるをえなかった(笑)。それぐらい知的刺激満載。
古典として読み続けられる理由、それが充分にわかる中身だった。