スティーヴ・ジョブズは、有名な講演のなかで「foolishであれ」と言ったが、まさにその「foolish」な人がここにいる。アイ・ウェイウェイだ。彼の名は日本ではあまり知られていないが、北京オリンピックの「鳥の巣」スタジアムの制作者だと言えば、なるほどと思う人は多いだろう。アイ・ウェイウェイは、建築家であるだけでなく、現代芸術家、詩人、出版人、カメラマン…など、さまざまな肩書を持つ。おもしろいことは何でもやってみよう、という人間なのだ。好きな言葉は、「自由」と「行動」だという。そんな表現者としての生の声が、この本から生き生きと流れ出してくる。文革時代の思い出、現在の中国政府への批判、芸術・哲学論など、率直に話すその語り口が、センスある翻訳のおかげで、ありありと伝わってくる。アイ・ウェイウェイは言う、「とてつもない努力や芸術や職人技を、役に立たないというか名前もないものに注ぎこむというのを、わたしはじつに面白いと思っている」と。これこそが、ジョブズの言う「foolish」精神なのだろう。たいへんなエネルギーをもつ創造性。それが、この本を読む者にも少しずつ伝染してきて、自分も「foolish」に何かをやってみたくなる。自分のなかのエネルギーをも目覚めさせてくれる本、それがこの『アイ・ウェイウェイは語る』なのかもしれない。